丸テーブルが欲しくて、使う人数や部屋の広さに対してどのようなサイズのテーブルを選べばいいのかを考えました。 (その1、その2)
そして小さめの直径100 cm以下の良い感じのテーブルについてまとめました。(その3)
どのテーブルも真剣に買うか悩んだモノたちでしたが、あまりに考えすぎたせいで理想が高くなり、なかなかどれにするか決めきれずにいました。
いっそのこと作ってしまえばいいのではと考え、今回はテーブルを設計したいと思います。
必要な面積から考える天板の大きさ
その1、その2で大きさについては結構考えました。
まず我が家は二人家族なので、食事に必要な最低限の面積をもつ丸テーブルの直径は63 cmとなります。
ただ、これは最低限で考えた面積です。実際にはコンロを出して鍋をやったり、人を呼んで食事をしたりすることもあります。
だから3人分くらいの面積は欲しいところです。
3人分の丸テーブルの直径は78 cmなので、きりがいいところでとりあえず80 cmとします。

直径 80 cmのテーブルの周りにはどれだけの空間が必要でしょうか。
二人が向かい合って座る場合を考えます。
後ろに通路を考えなければ、椅子を引くための余裕だけ確保すればよく、テーブルと壁の適切な距離は75 cmです。
でももう片側の後ろには通路が欲しいです。椅子に人が座っている状態で、後ろをすり抜けるためにはテーブルから壁まで90 cm必要です。

したがって80 + 75 + 90 cmの幅が確保できれば 人が通れます。
我が家の場合、幸いこれはクリアしています。
ということで、丸テーブルの直径は80 cmで考えていきます。
椅子に合わせて考える机の高さ
市販されている机は70 ~ 75 cmのものが多いようです。
日本製のものは70 ~ 72 cmくらい、海外製のものはそれ以上が多いようです。
では自分の体に合った適切な高さはいくつなのか。
70 ~ 75 cmの間で1 cm刻みで使用感が変わるかと言えば、実はそうでもありません。
そう思うのは外食に行って、テーブルに数cmの差の違和感を感じたことはあまりないからです。
なぜ違和感を感じないのか。椅子の高さとちゃんとあっているからでしょう。
つまり、すでに座る椅子があるのであれば、それに合わせるのが一番いいのではと思います。
家にある椅子の高さを見ると座面45 cm程度の比較的高いものが多いため、気持ち高めにします。
また、今まで使っていた73 cmのダイニングで違和感はなかったため、今回自作するテーブルも高さ73 cmとします。
余裕のあるスペースを確保するための脚の本数
まず一般的な4本脚の場合、直径80 cmの天板に取り付けるとどうなるでしょうか。
天板の外側ギリギリのところに脚をつけると、脚と脚の間隔は57 cmとなります。脚の太さを考えるとさらに狭くなります。
椅子の幅は比較的大きいもので55 cm(例えばYチェア)程度であり、これでは狭すぎます。

だから、直径80 cm程度の小型の椅子には3本以下の脚にする必要があります。
2本脚の丸テーブルはあまりに独特なので1本か3本が妥当でしょう。
実際前回紹介した丸テーブルたちも小型のものたちは1本脚か3本脚でした。
自作するにもこのどちらかにしようと思います。
JIS規格から考える机の安定性
脚が1本や3本だと心配になるのが安定性です。
脚が接地している場所が内側すぎると、天板の端に体重をかけただけで簡単に倒れてしまいます。
ではどれくらい外側につければ安全なのでしょうか。
こうゆうことは、工業製品ではきっちり決められているだろうと、日本産業規格(JIS)を調べました。
すると、テーブルに関わるJIS規格はいくつかありました。
・JIS S1010 : 事務用机の寸法
・JIS S1031 : オフィス家具-机・テーブル
・JIS S1061 : 家庭用学習机
・JIS S1202 : 家具-テーブル-安定性の試験方法
・JIS S1205 : 家具-テーブル-強度と耐久性の試験方法
・JIS S1207 : オフィス用家具-テーブル・机-安定性, 強度及び耐久性試験
いろいろ読み解いていくと、天板の端に体重をかけたときの安定性は「垂直荷重下の安定性試験」を行えば良さそうです。
これは天板の端から〇〇 mm離れた位置に○○ kg の力を加えた時に脚が浮くかどうかを見るテストです。
これが分かれば「てこの原理」から支点となる脚の位置を計算でおおよそ出すことができるはずです。

ただ、調べ方が悪いのか、JIS規格に存在しないのか、家庭用ダイニングテーブルの安定性に関するものは見つかりませんでした。
JIS S1202が一番近いと思ったのですが、ここにはどこに力を加えればいいのかは書いてありますが、何kgまで耐えられればいいかは書いてありません。
JIS S1061には天板の端から50 mm離れた位置に45 kgの力を加えると書いてあるのですが、学習机のため対象が小中学生であり、目的と少しずれています。
(45 kgというのは子供の体重から考えて決めているのだと予想)
仕方がないので、JIS S1031、JIS S1207のオフィス用家具を参考にします。
「既定の垂直力は、ふちから100 mm離れた天板の、テーブルが転倒する可能性が最大の点に」加えるとあります。(JIS S1207)
「既定の垂直力」がいくつかはその目的に応じて異なり、4つのパターンがありました。
・執務用机 630 N(N:ニュートンは力の単位。約64 kg相当)(JIS S1031)
・その他 335 N(約34 kg相当)(JIS S1031)
・作業用テーブル 750 N(約77 kg相当)(JIS S1207)
・その他 400 N(約41 kg相当)(JIS S1207)
その他が二つあるけどその違いが判りません。執務用机と作業用テーブルの違いも分からない。。
心が折れそうですが、十分に安全な机を考えるなら、一番条件の厳しい作業用テーブルで考えるべきでしょう。
(ちなみに「作業用テーブル」で検索したら工場の現場作業に使われていそうなごついテーブルが出てきました)
77 kg相当というと、成人男性の平均体重とほぼ同じであり、机の端に大人一人乗っても大丈夫な安定性となります。ちょっとオーバースペックかも。

てこの原理で考える机の安定性
だんだん小難しくなってきましたね。結論だけ気になる方は飛ばしてください。
机の端から10 cmのところ、つまり直径80 cmの丸テーブルの中心から30 cmのところに77 kg相当の力を加えて倒れない机の脚の位置を考えます。これはてこの原理で考えられそうです。

ただその計算に入る前に、机の重さ、机の力を加える位置を決めておきます。
まず机の重さ。直径80 cm、厚さ30 mmの木の板は10kgくらいのようです。
また家にある机から脚を外し、重さを測ったら5 kgくらいでした(金属脚です)。
とりあえず机の重さは15 kgで計算します。
次に力を加える位置について。これは一番安定性の悪い位置を考えます。例えば3本脚の場合、脚と脚のちょうど真ん中のあたりが一番押して倒れそうです。
ここがてこの原理の力点となります。
作用点はテーブルの中心。支点は、脚同士を結んだ線と力点、作用点を結んだ線の交点になります。
注意すべきは中心から脚までの距離が支点ではないということです。

一本脚の場合も同じです。一本脚の先が4股になっている場合。この4股の先端をつなげた線上が支点となります。
言葉だと分かりづらいですね。これも図にしました。

これで3本脚でも1本脚でも同じ理屈で支点の位置を考えられるようになります。(脚が何本でも、脚の形が猫脚のように複雑でも同じように考えられます。)
計算するための準備はそろいました。
丸テーブルの中心から支点までの距離をa、
丸テーブルの中心から力点(机の端から10 cm)までの距離をb(=30 cm)、
丸テーブルの重さをm(=15 kg相当)、
力点に加えられる力をM(=77 kg相当)として式に表すとこうなります。

ここから支点までの距離aは約25 cmだと計算できます。
ただ机の重さm = 15 kgというのはざっくりとした仮の値であったため、mに対して支点までの距離aがどう変わるかグラフにしておきます。
テーブルを10 ~ 20 kgで大きく変化させても1 ~ 2 cm程度しか変わらないことが分かります。

倒れないテーブルのための脚の位置
支点の位置が分かりました。
しかし先に述べたように支点の位置はそのまま脚の位置とはなりません。脚を結んだ線上が支点です。

天板より外側に脚が配置されることになる
中心から支点までの距離が25 cmであれば、中心から脚までの距離は50 cmです。
直径80 cm、半径40 cmの丸テーブルに対して50 cmということは、天板より外側に脚をつけなければならないということです。
ここで前回紹介した丸テーブルのartekのTable 90Bを思い出してみます。小型の丸テーブルであり、3本脚のテーブルです。確かに天板より外側に脚が出ています。
もちろん、artekのテーブルがJIS規格で作られているわけではないため、正確に今回の計算の通りではないでしょうが、安定性を保つために外側に脚が出ているという事実が今回の考え方に自信を持たせてくれます。

では1本脚の場合はどうでしょう。考え方は同じです。
1本脚の先が4股に分かれている場合、その先端をつないだ正方形の一辺は50 cmとなります。
ちなみに3股の場合は、3本脚のときと同じように天板より外側に脚が出ることになり、あまりに不格好です。3股の一本脚テーブルがほとんど存在しないのも納得です。
もしそのようなテーブルが存在したら、倒れやすいので絶対に買わない方がいいです。

ではどんなテーブルを設計するか
ここまでたどり着くのに時間がかかりました。
結局どんなテーブルを設計するか。まずは3本脚か1本脚。
3本脚の場合、天板より外側に脚を接地させる必要がありますが、これを実現するには脚を斜めに天板に取り付けるか、L字の脚にする必要があります。
これを不格好にせずに設計することも、がたつかせずに作り上げる技術もありません。
簡単なDIYとして木の板に鉄脚を取り付ける方法もありますが、安定させるのにちょうどいい角度の鉄脚を用意するのも難しそうなので却下。
3本脚は見る角度によって、大きく印象が変わり、そのいずれの角度からもかっこよくなる角度の脚を考え、実際に用意することが一発の設計でできるとは思えません。
選択肢はもう1本脚しかありません。ベース部分は丸型なら直径50 cm、四角(正方形)なら一辺50 cm、五角形なら、、まあいいでしょう(計算が面倒くさい)。
これを自分で作ることはできないため、市販で使えるものを探すしかないでしょう。
天板の直径は80 cm、テーブルの高さは73 cm。
これで大まかなテーブルの設計は決まりました。
あとは細かいところを考える必要があります。脚としてちょうどいいものはあるか、天板の形はどうするか(丸なのは決まっていますが、その端をどのような処理にするかなど)、天板の厚みはどうするか、素材はどうするか、木なら木の種類をどうするか、色は、塗料は、表面の粗さ、仕上げは、それだけ決めたうえで重さはどうなるか、その重さに対して適切な脚の設計になっているか、などなどはもうちょっと考えなければいけません。
ということで、これだけ書きましたが、まだ続きます。