前回、大好きな椅子No.14について熱く語りました。
しかし肝心の座り心地を含めた使い心地について忘れていたので、今回はその辺書いていきます。
座り心地はソフト
我が家にあるNo.14はチェコのTON社が現行で生産しているNo.14で、籐編み座面、補強パーツ無しのタイプです。
これが最もオリジナルに近い形状だと思います。
座面タイプや補強パーツなどのバリエーションついてはまた後半で書きます。

TON社はロゴがNo.14でかわいいですね。
この会社はもともとトーネット社の最大の工場だったビストリッツェ工場が独立してできた会社です。この経緯には大戦など歴史が影響しています。
さて一番肝心の座り心地です。
曲げ木がしなやかな木の特性を使っているところからもわかるように座り心地もソフトです。
曲げ木に使われるバーチ材がよくしなるため、二本の背もたれが軽くしなりながら体重を受け止めます。
とはいえ背もたれは二本しかないため当たりが気になる人は気になるかもしれません。
4本脚のうち1本が少しだけ浮いていることがありますが、座ると体重で脚も微妙にしなるため、4本がしっかりと着地しガタガタすることはありません。
このあたり、曲木の特性をうまく使ってよくできているなと感心します。
こうなるように脚も少し外向きに反っており、そのおかげで椅子全体の見た目のバランスも良くなっているという、機能と見た目の良さが常にいい方向に影響を及ぼしあっています。

座面の角度は水平
座面は水平で安楽性が高いとは言えません。
安楽性の高い椅子は後ろに傾斜しています。
ただ、後ろに傾斜しすぎると食事や作業がしにくくなり、安楽性と作業性はトレードオフだと思います。
その点No.14は食事や作業をするのに向いていると言えます。
もともとウィーンのカフェで大量に使われていたという歴史からも納得です。
ちなみにソファタイプには傾斜しているものが多く、ハンスウェグナーのGE290やCH25などは傾斜した座面の延長に後ろ脚とする構造で高い安楽性とかっこよさを両立しています。

籐編み座面は座り心地いいけど
では長時間座っていられないかと言ったらそんなことはなく、籐編みの座面は適度な張りで柔らかくフィットして、通気性もあるため熱がこもりません。
ただしよく売られている板座面のタイプは、ほば水平の合板なので座り心地はそれなりです。
我が家のもう一脚ある曲木椅子No.30(トーネットのオリジナルNo.6009を継承したTON社のモデル)は板座のため、あまり長時間は座れず普段もクッションを置いています。

籐編みが絶対いいかと言ったら、そうでもなく、耐久性の面では不安があります。
19世紀のNo.14発売当初は籐編みしかなく、生産が追い付かなくなったため合板座面が加えられたようです。
それ以降、板座と籐編みは両方生産されていたにも関わらず、ビンテージで残っているものの多くが板座であるところを見ると、籐編み座面の耐久性は高くないと言えそうです。
確かに子供が上で飛び跳ねたら破れそうな雰囲気はあります。

座面は少し高い
唯一ネックとなりうるのは座面の高さです。46 cmあります。
日本製の椅子だと40 ~ 43 cmあたりが一般的で、海外製のものでも42 ~ 45 cmあたりです。
普段40 cmの椅子に座っている人が46 cmにしたら違和感を覚えるでしょう。
しかし、我が家の場合はいろんな座面高さの椅子が入り混じっているので逆に気にならなくなっています。
身長160 cmの妻も普通にこの椅子を使っています。
この海外との座面高さの差について「身長が違うから」という説明をよく聞きます。
しかし、この元祖庶民の椅子No.14が生まれた1850年ごろのヨーロッパ人の平均身長は、今の日本の平均身長より低いというデータがあります。
したがって、座り心地がいい座面高さは身長だけで決まらないということではないでしょうか。
根拠の少ない自説ですが、最適な座面高さは体格よりも慣れのほうが影響が大きいのではないかと思います。
椅子が高いか低いかという感覚は絶対的な感覚というよりも、普段座りなれている椅子の高さに対してどれだけ異なるかということのほうが重要ではないかということです。
いずれにしても、46 cmという高さは普段低い椅子を座っている場合にはネックになりうる高さですが、長い目で見た時にはわりとすぐ慣れる高さともいえると思います。
まとめ
籐編み座面のNo.14の座り心地についてまとめました。
座面高さが一般的な椅子より高いというところ以外は、文句のつけようがない素晴らしい椅子です。
見慣れた椅子で意識せず座っている方も多いと思いますが、次街中でNo.14に出会ったらじっくり観察してみてください。
本当にいい椅子ですから。